日本人がつまづく英語の音|母音3セット+子音R/L/THの攻略
はじめに
前回の記事で、日本人の英語が通じない・聞き取れない4つの理由と、今日から始められる3つの改善法をお話ししました。聞こえた通りに真似する、日本語にない音があることを知っておく、AIに話しかけてフィードバックをもらう。まずはこの3つから始めていただくだけでも、発音への意識は確実に変わってきます。
一方で、実際にやってみると「具体的にどの音から、優先して意識すればいいんだろう?」という次の疑問が湧いてくる方も多いと思います。英語の母音は15種類以上、子音も日本語にないものが複数。全部を均等に押さえようとするとパンクしちゃうんですよね。
今回は、そこに答える回です。
英語の音は無数にあるけど、通じる英語の入り口としてまず押さえたいのは7つ。これだけでも、通じやすさはしっかり変わります。具体的には、母音3セット+子音3領域+曖昧母音の知識。これから一つずつ見ていきます。
前回と同じく、完璧を目指す話ではありません。ネイティブを目指す話でもありません。「初対面の相手にも通じる英語」にアップグレードするための、入口としての7つ。いつも通り、ゆるくやっていきましょう。
まずは「音の区別」から始める理由

発音の話をすると、「音の区別」「リズム」「イントネーション」「アクセント」と、いろんな要素が出てきます。実はこれ、どれも同じくらい大事です。1つ押さえれば全部解決する、という魔法の要素はありません。
ただ、全部を同時にやろうとすると確実に手が止まりますよね。なのでこのシリーズでは、順番に一つずつ取り組んでいく方針です。
その第一歩として、今回「音の区別」を選んだのにはいくつか理由があります。
- 反応がわかりやすい — 単語レベルの話なので、「今の発音、通じた/通じなかった」が判断しやすい。リズムやイントネーションは「全体の流れ」なので改善を自覚しにくいんですが、音の区別は結果が返ってきやすいんですよね
- 単語の誤認識に直結する — right と light、sheep と ship のように「別の単語に聞こえてしまう」のは、音の区別の問題。会話の誤解の原因になりやすい部分です
- 前回の続きとして自然 — 第1回で話したカタカナ変換・母音・子音・余計な母音。ここを深掘りすると、ちょうど「音の区別」の領域になります
くり返しになりますが、リズムやイントネーションが後回しでいいという話ではありません。音の区別である程度感覚がつかめたら、次はリズム、そしてイントネーション、と順番に積み上げていきます。それぞれ、この先の記事でちゃんと扱っていく予定です。
今日はその最初の一歩。母音3セットから見ていきましょう。
母音編:押さえるべきは3セットだけ
セット①:3つの「ア」— cat / cup / car
日本語の「ア」は1つ。英語にはこの音域に3種類あります。
- /æ/ — cat 🐱
- /ʌ/ — cup ☕
- /ɑː/ — car 🚗
日本人は3つとも「ア」で発音しがち。ネイティブにとってはこれ、全部違う単語として扱われます。
ざっくり言い分けのコツはこうです。日本語の「ア」を基準に、それぞれの音の立ち位置を整理してみます。
-
/æ/(cat) は「エ寄りの『ア』」。口を横に広げて、笑顔を作ると自然にこの口になります

-
/ʌ/(cup) は「曖昧で短い『ア』」。力を抜いた「ア」を、短く切るイメージ

-
/ɑː/(car) は「はっきりした『ア』」。口を縦に大きく開ける。お医者さんに「あーんしてください」と言われるときの口です

全部を常に言い分ける必要はありません。でも、単語を覚えるときに「この単語はどのアなのか」を意識するだけで、じわじわ変わってきます。
ちなみに、この「3つのア」の違いを30秒の動画でサクッと見たい方は、第1回のショート「『ア』だけで3通り!英語の母音ミニ講座」もあわせてどうぞ。
セット②:/iː/ vs /ɪ/ — sheep と ship
日本語だと「イー」と「イ」の違いに感じますが、これ、長短じゃなくて音質が違うんです。多くの日本人はここで勘違いしています。
- /iː/ — sheep 🐑 、eat、leave
- /ɪ/ — ship 🚢 、it、live
正直に言うと、この2つは筆者自身も難しいです。自分がちゃんと言い分けられているか、ネイティブに聞き分けてもらえているか、いまだに自信がない瞬間があります。それくらい、日本人にとってはデリケートな区別なんですよね。
でも、ざっくりしたイメージだけでも押さえておくと、伝わりやすさは確実に変わります。
- /iː/(sheep) は「はっきりした日本語の「い」」。口を横にちょっと引いて、「ニッ」と笑うような感じで出す音
- /ɪ/(ship) は「曖昧な「い」」。「い」と「え」の中間くらいで、口の力を抜いてゆるんだ感じで出す音
つまり、日本人がふつうに「シ+イ」と言うと、むしろ /iː/ の sheep 側に寄るんです。ship のほうは口の力を抜いて、ちょっと「え」に近づける意識を持つと、通じやすくなることが多いです。
細かく意識しすぎると、かえって混乱します。「はっきりイ(口を引く)」と「ゆるいイ(え寄り・力を抜く)」。このざっくり感で十分です。
セット③:/ʊ/ vs /uː/ — book と boot
こちらも長短じゃなくて音質の違いです。
- /ʊ/ — book 📖 、full、put
- /uː/ — boot 👢 、fool、food
日本人はどちらも「ウー」で済ませがち。でもこれ、特に book を「ブーク」と言ってしまうと通じにくいんです。
セット②と同じく、ざっくりしたイメージで押さえましょう。
-
/ʊ/(book) は「曖昧な日本語の「う」」。唇の力を抜いて、ゆるく短めに出す音

-
/uː/(boot) は「はっきりした日本語の「う」」。唇をしっかり前に出して、丸めて出す音

つまり、日本人が普段「ウー」と伸ばして言うと、むしろ /uː/ の boot 側に近くなります。book のほうは**唇の力を抜いて、曖昧な「う」**を意識すると、通じやすくなることが多いです。
“could”(/kʊd/)と “cooed”(/kuːd/)みたいに、同じ綴りのようで別の単語もあります。混同すると「え?」となるやつ。
細かく意識しすぎると、かえって混乱します。「曖昧ウ(力を抜く)」と「はっきりウ(唇を丸める)」。このざっくり感で十分です。
子音編:日本人が特に詰まる3領域
子音は日本語にない音がいくつかあります。全部やる必要はなくて、特に通じにくさに直結する3領域だけ押さえましょう。
R vs L — right と light
これは有名ですね。日本語ではどちらも「ラ行」ですが、英語では完全に別の音です。
- R — right
- L — light
見分けは、舌の位置が全く違うこと。
-
R:舌をどこにもつけない。口の中で舌を浮かせて、少し丸めるイメージ

-
L:舌先を上の前歯の裏にしっかりつける。日本語の「ラ行」に近いんですが、ラ行のときのように上あごにつけるんじゃなくて、前歯の裏につけるのがポイント

正直に言うと、聞き分けは日本人にはかなり難しいです。でもそれでOK。大事なのは自分が話すときに言い分けようとすること。文脈があれば相手は理解してくれます。
ちなみに、舌の位置の違いを動画で見たい方は、第1回のショート「rightとlightを言い分けるコツは”舌の位置”」もあわせてどうぞ。
TH — think と this の音
日本語に存在しない音です。つい「シンク」「ディス」と言ってしまいがち。
- /θ/(無声TH) — think 、thanks、three
- /ð/(有声TH) — this 、that、they
コツは舌先を上下の前歯で軽く挟む。息だけ出すと /θ/、声を出すと /ð/ になります。

文脈があれば「ス」や「ズ」で代用しても通じることはあるんですが、たまに別の単語になってしまうケースもあります。例えば “think” を「シンク」と言うと、“sink”(沈む/流し)と勘違いされることが。
TH は、上下の歯で舌をちょっと出す、これだけ意識してみてください。
V vs B — very と berry
日本語では両方「ベリー」になってしまいます。
- V — very
- B — berry
違いはシンプル。
-
V:上の前歯で下唇に軽く触れて、息を出しながら声を出す(唇は閉じない)

-
B:日本語の「バ行」と同じ。唇をしっかり閉じて、一気に開く音
V は「唇を歯で軽く噛む」と教わることもありますが、噛むと言うより**「触れる」くらい**がちょうどいいです。
F と H はどうなの?
ちなみに第1回で触れた F と H は、日本語の「フ」が /f/ にかなり近い音なので、他の3つほど深刻な問題になりにくいんです。しかも F はさっき紹介した V から「声」を抜いた音。V の口の形(上の前歯で下唇に触れる)で声を出さずに息だけ出すと、それが F になります。つまり V が言えれば F もほぼセット。H は日本語の「ハ行」とほぼ同じなので、この2つは特に深く考えなくてOK。今回は優先度が高い3領域に絞りました。
曖昧母音 /ə/ は「知っておくだけ」でOK

ここまで頑張って読んでくれた方へ、おまけの話。
英語で最もよく使われる母音、実は「曖昧母音」と呼ばれる /ə/ なんです。発音記号で言うと「シュワ(schwa)」と呼ばれる音。
例えば:
- about の最初の a
- sofa の最後の a
- teacher の er
どれも「ア」や「エ」や「ウ」の中間に聞こえる、と言われることもあります。でも私自身は、ほとんど「ア」っぽく聞こえます。
理由はシンプルで、/ə/ は口の力を完全に抜いたときに出る音だから。力を抜いた口は、自然に「ア」の形に近くなります。「ウ」みたいに唇を丸める形には、力を抜いてもなりません(ウは唇を前に出す、力の入る音なんですよね)。
だから、ざっくり「弱いア」として覚えておくだけで十分です。
日本人がカタカナで「アバウト」「ソファー」「ティーチャー」と読むと、この弱い音が全部ハッキリした母音に変わってしまいます。そこを「弱いア」に置き換えてあげるだけで、ぐっと自然に近づきます。
練習する必要は、それほどありません。「英語には、弱く曖昧に発音される部分がある」ということを知っておくだけで、リスニングのときに「この部分はサラッと流れる」と予測できるようになります。これだけで、聞き取れる範囲がぐっと広がるんです。
今日から始められる3つの練習法

① 単語を覚えるときに「どの音か」意識する
新しい単語を覚えるときに、発音記号を軽く確認するクセをつけてみてください。/æ/ なのか /ʌ/ なのか。/iː/ なのか /ɪ/ なのか。最初は面倒でも、2〜3週間続けると自然にできるようになります。
② AIに話しかけてみる

ChatGPTなどのAIに英語で話しかけてみましょう。sheep と ship、right と light を言い分けて、AIがちゃんと聞き分けてくれるかテストする。
AIに通じれば、少なくとも機械レベルの発音ができています。通じなければ、そこが弱いポイント。手軽にフィードバックが得られるので、本当におすすめです。
③ 短いシャドーイング
映画やYouTubeの短いセリフを、2〜3秒だけ繰り返し真似する。自分の声を録音して、オリジナルと聴き比べる。これを1日5分でも続けると、驚くほど変わってきます。
長くやる必要はありません。短く、毎日が効きます。
まとめ
今日の内容を整理します。
まず押さえるべき音は、この7つだけ:
- /æ/ vs /ʌ/ vs /ɑː/(cat / cup / car)
- /iː/ vs /ɪ/(sheep / ship)
- /ʊ/ vs /uː/(book / boot)
- R vs L(right / light)
- TH(think / this)
- V vs B(very / berry)
- 曖昧母音 /ə/ の存在を知る
完璧を目指さなくて大丈夫です。「この単語は普段の自分の発音と違うかも」と意識するところから始めれば十分。
最初にお話しした通り、発音は音の区別だけでなく、リズムやイントネーションも同じくらい大事です。音の区別でちょっと感覚がつかめてきたら、次はリズム、そしてイントネーションと、一つずつ積み上げていきましょう。
続編のリズム編は公開済みです → 英語が一気に流れて聞こえる正体|リズムと連結の3パターン(連結/脱落/弱形+崩し系)。その次はイントネーション編を予定しています。

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