英語の弱形一覧29語|can・him・that が聞き取れない理由

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英語の弱形一覧29語|can・him・that が聞き取れない理由

はじめに:I can do it. の can が聞き取れない理由

英語を聞いていて、こんな経験はありませんか。

  • can と can’t の区別がつかない — t が聞こえないから、肯定か否定か決められない
  • Tell him. が「テリム」に聞こえる — him はどこへ消えたのか
  • 単語は全部知っているのに、文になると聞き取れない

学校では、単語を辞書の発音で覚えましたよね。なのに実際の英語では、その音で読まれない単語がある。

これ、あなたの耳のせいではありません。英語には弱形(じゃくけい)という仕組みがあるんです。

この記事でわかるのは、弱形になる単語の一覧と、その聞こえ方。よく出る29語を3グループに整理して、can と can’t の聞き分けまで解きます。丸暗記は必要ありません。「そう来る」と知っておくだけで効きます。

先に結論を出しておきます。

機能語は、強く読む理由がないかぎり弱くなる。辞書の音のほうが例外です。

この記事を読むとわかること

  • 弱形の一覧29語——代名詞/be動詞・助動詞/前置詞ほかの3グループ(カタカナ+発音記号つき)
  • can と can’t の聞き分け——決め手は t ではなく強弱
  • 強形が出る3場面——弱形が基本、強く読むときには理由がある

この記事は、弱形を聞き取るためのリスニング Tips です。29語を自分で正確に発音できるようになる必要はありません。ゴールは、聞こえるようになることです。

I can do it. の各単語を音量メーターで表した図。do のメーターがいちばん大きく、can がいちばん小さい。I と it はその中間。can の下に「クン」とカタカナ・発音記号 kən が添えられ、can の左にはやせ細ってうなだれたキャラクター、do の左には力こぶを作った筋肉隆々のキャラクターが立っている
大きいのは do。can が聞こえないのではなく、小さく読まれているだけなんです。

動画でも話しています(約16分)


前提:弱形は手抜きじゃなく標準仕様——辞書の音(強形)は「単独で読んだときの音」

左右2列の比較図。左は力こぶを作ったキャラクターの下に辞書があり、can・キャン・kæn・「単独=強形」と縦に並ぶ。右はうなだれたキャラクターの下に吹き出しがあり、I can do it.(can はグレー)・クン・kən・「文の中=弱形」と縦に並ぶ
辞書の発音は「その単語だけを読んだときの音」。文に入ると音は変わります。

まず、大きな前提を1つ入れ替えます。

英語の単語には、強形と弱形という2つの顔があります。弱形は英語で weak form といいます。

  • 強形 … その単語を単独で読んだときの音。辞書に載っているのはこちら
  • 弱形 … 文の中で強く読まれない位置に来たときの音。実際の会話で出てくるのはこちら

ここに1つだけ条件を足します。弱形になるのは、強勢(強く読む力)が置かれない機能語です。文の中にあっても、対比や強調で力が入れば強形のまま。「文の中だから必ず弱い」ではないんですよね。

つまり辞書の発音は「代表の音」であって、「いつもその音で読む」という意味ではありません。

ここで、今回のゴールを確認しておきます。弱形を自分で「作る」ことではありません。聞いたときに「この音で来た」と気づけることです。

では、どの単語が弱くなるのか。答えは機能語です。第3回の弱形入門で少し触れましたが、ここでおさらいしておきます。

中身文の中では(基本の傾向)
内容語名詞・動詞・形容詞・副詞(意味そのものを運ぶ語)強く・はっきり読まれやすい
機能語代名詞・be動詞・助動詞・前置詞・冠詞・接続詞弱く・短くなりやすい

この表は「そうなりやすい」という傾向の話です。機能語でも強く読まれる場面はあります(記事の後半で3つ紹介します)。

英語は「大事な単語だけ大きく、あとは小さく」という強弱のリズムで進みます。機能語は文の骨組みを作るだけの裏方。だから強く読む理由がないかぎり、小さく読まれるのが標準なんです。

ここで、いちばん大きな誤解を片付けておきます。

弱形って、くだけた英語のことじゃないの?

違うんです。弱形は、ていねいな英語でも普通に起こります。ニュースの読み上げでも、式典のスピーチでも同じです。改まった発話でも、強調されない機能語には弱形が現れます。速く雑に話すから弱くなるのではなく、英語のリズムがもともとそうできているんですよね。

なお、第9回の主語・be動詞の省略とは別ものです。1行で整理しておきます。

  • 第9回(省略) … 単語がなくなる。Are you ok? → You ok?
  • 今回(弱形) … 単語は残っているが、弱くなる。I can do it. の can

消えたのか、弱くなっただけなのか。ここが区別できると、聞き取りの精度が上がります。


弱形一覧:3グループで覚える——代名詞/be動詞・助動詞/前置詞ほか

弱形になる語を3つの箱に分けた図。①代名詞(him ɪm、her ər、his ɪz)、②be動詞・助動詞(can kən、was wəz、have həv)、③前置詞ほか(that ðət、as əz、at ət)。各語に弱形の発音記号を併記
弱形になる語は3グループ。まとめて覚えるより、グループごとのほうが頭に入ります。

ここから本編です。よく出る29語を3グループに分けて並べます。

その前に、弱形の「主役の音」を1つだけ紹介させてください。弱形の発音記号でいちばんよく出るのが /ə/(シュワ) です。口の力を抜いて、短くあいまいに出す音。日本語の「ア」「ウ」「オ」のどれでもない、ぼやけた音です。弱形の多くは、母音がこのシュワに置き換わって生まれます。

このあとの表には、カタカナと発音記号の両方を載せました。役割が違うからです。

  • カタカナ … 音の体感をつかむため
  • 発音記号 … その音を正確に押さえるため

記号が読めなくても大丈夫です。「ə が入っている=力が抜けている」とだけ思ってください。

発音記号はアメリカ英語を基準にしました。この記事の音源に合わせています。

なお、弱形のカタカナは目安です。話す人や速さによって揺れます。「だいたいこう聞こえる」くらいの気持ちで眺めてください。

グループ①:代名詞——him が「ィム」になるのは h が落ちるから

単語強形弱形例
himヒム /hɪm/ィム /ɪm/Tell him. → テリム
herハー /hɜːr/ァー /ər/Get her. → ゲラー
hisヒズ /hɪz/ィズ /ɪz/in his car → イニズカー
heヒー /hiː/イ(短く) /i/Did he go? → ディディゴウ
themゼム /ðem/ザム /ðəm/さらにェム(‘em) /əm/Tell them. → テルザム/テレム
youユー /juː/ヤ /jə/See you later. → シーヤレイター
yourユア /jʊr/ヤ(ー) /jər/What’s your name? → ワッツヤネイム

音でも確かめてみましょう。

Tell him.

Get her.

このグループの主役は、h が落ちるという現象です。

him her his he。どれも頭の h が消えることがよくあります。残るのは「ィム」「ァー」。ここに前の単語がくっつくと、Tell him が「テリム」になるわけです。

Get her. はさらに一段崩れます。h が落ちて「ゲット + ァー」になり、その t がフラップTになって「ゲラー」。t が d や r のように聞こえる現象ですね(詳しくは第5回のフラップTの解説)。

1つの単語に、いくつ仕掛けがあるの…?

そうなんですよね。実際の英語では、弱形・連結・フラップTが同時に起きます。だから1つずつ知っておくと、ほどけるようになるんです。単語がくっつく仕組みは第3回の連結の解説で扱っています。

なお、h はいつでも落ちるわけではありません。落ちやすい条件は、前に語があって、そこに強勢が置かれない位置にいること。裏を返すと、次の場合は落ちにくくなります。

  • 文頭にあるとき … He is my friend. の he
  • ポーズ(区切り)の直後にあるとき … 言い直しや、間を置いた後
  • 強調しているとき … HIM? Not me. の him

Tell him. の him は文の最後にありますが、前に tell があって強勢も乗りません。だから h が落ちて「テリム」になるわけです。位置というより、力が入っているかどうかで決まるんですよね。

最後に them を1つだけ。この語は2段階で崩れます。ふつうの弱形は「ザム」。母音がシュワになった形です。そこからさらにくだけると、頭の音まで落ちて「ェム」になります。'em と書かれるあれですね。

'em って、そういう成り立ちだったんだ…

はい。崩し表記は、たいてい弱形の延長線上にあるんです。

グループ②:be動詞・助動詞——can・was・have は文の中では弱い

単語強形弱形例
canキャン /kæn/クン /kən/I can go. → アイクンゴウ
wasワズ(はっきり) /wʌz/ワズ(軽く短く) /wəz/I was there. → アイワズゼア
wereワー /wɜːr/ワ /wər/They were here. → ゼイワヒア
areアー /ɑːr/ァ /ər/We are ready. → ウィァレディ
haveハヴ /hæv/ハヴ(母音を弱く) /həv/さらにァヴ /əv/They have gone. → ゼイァヴゴーン
hasハズ /hæz/ハズ(母音を弱く) /həz/さらにァズ /əz/She has left. → シーァズレフト
doドゥー /duː/ダ /də/What do you think? → ワッダユスィンク
wouldウッド /wʊd/ワド /wəd/I would like it. → アイワドライキッ

have・has・do・would が弱形になるのは、助動詞として使われるときです。I have a car.(持っている)のような本動詞の have は内容語あつかいで、はっきり読まれます。同じ形でも役割で変わるんですね。

have・has には、もう一段あります。弱く読まれると、まず母音がシュワになって /həv/ /həz/。そこから h まで落ちると /əv/ /əz/ です。h が落ちやすい条件は、グループ①の代名詞と同じ。文頭やポーズの直後では、h は残ります(Have you seen it?)。

I was there.

was で注意したいのは、音が消えるわけではないことです。w の音は残ります。変わるのは母音のほう。強形のはっきりした「ア」が、シュワ /ə/ になって短く潰れる。だから「ワズ」のまま、軽く速く通り過ぎるように聞こえます。

このグループの合言葉は、「主役を支える裏方は弱い」です。

文の意味を運んでいるのは、go there ready といった内容語のほう。can や was は、それを文法的に支えているだけなんですよね。だから軽く流されます。

ちなみに have や would は、弱形の先にもう1段あります。縮約です。

  • I have done it. → I’ve done it.
  • I would like it. → I’d like it.

弱くなった音が、そのまま文字になった形ですね。この「音が縮んで文字になる」流れをさらに進めると、gonna や shoulda になります(第7回の崩し表記の解説)。

弱形・縮約・崩し表記は、どれも音が短くなっていく関連現象です。厳密には別の仕組みですが、「力を抜くと短くなる」という方向は共通しているんですよね。

グループ③:前置詞・冠詞・接続詞——that・as・at は影が薄い

単語強形弱形例
atアット /æt/ァト /ət/Look at this. → ルッカディス
fromフロム /frʌm/フルム /frəm/far from here → ファーフルムヒア
anアン /æn/ァン /ən/an apple → ァナポー
someサム /sʌm/スム /səm/some water → スムワーラー
that(接続詞)ザット /ðæt/ザッ /ðət/I know that he’s here. → アイノウザッヒーズヒア
thanザン /ðæn/ゼン /ðən/better than this → ベターゼンディス
asアズ /æz/ァズ /əz/as soon as → ァズスーナズ
orオア /ɔːr/ァー /ər/tea or coffee → ティーァーコーフィ

第3回で扱った to / for / and / of / a / the も、このグループの仲間です。I want to go. が「アイウォンタゴウ」になるあれですね。弱形だけ、ここに再掲しておきます。

単語強形弱形
toトゥー /tuː/タ /tə/またはトゥ /tu/
forフォー /fɔːr/ファまたはフ /fər/
andアンド /ænd/ンド /ənd/さらにン /ən/
ofオブ /ʌv/ァヴ /əv/またはァ /ə/
aエイ /eɪ/ァ /ə/
theジー /ðiː/ザ /ðə/

この6語は、日常会話での登場回数がとくに多いグループです。詳しい解説と音源は第3回の弱形入門にあります。

このグループで、いちばん誤解が多いのが that です。

that の顔は2つ、さらに「そもそも消える」場合もあります

同じ that でも、役割によって強さが変わります。しかも、that 自体が現れないこともあるんですよね。

役割例読まれ方
指示語(あれ・それ)Look at that.強形「ザット」 /ðæt/。はっきり聞こえる
接続詞・関係代名詞I know that he’s busy.弱形「ザッ」 /ðət/。軽く流される
そもそも省略I know he’s busy.that 自体がない

「あれ」と指す that は、内容語と同じ扱いです。指し示す情報そのものを運んでいますから、しっかり読まれます。

一方、I know that… の that は、文と文をつなぐだけの部品。運ぶ情報がないので、影が薄くなります。

ここでのポイントは、変わるのは母音だということ。「t が消えて短くなる」だけではありません。強形の「ア」(/æ/)が、弱形ではシュワ(/ə/)に置き換わります。同じ「ザ」でも、力の抜けたぼやけた音になるわけです。

そして3つ目。接続詞の that は、文法的にまるごと省略できる場合があります。I know he's busy. のように、that がない文も普通なんですよね。「聞こえなかった」のではなく「最初からなかった」パターンです。単語そのものが消える現象は、第9回の省略パターンの解説で扱っています。

同じ単語でも、役割が変われば発音の強さも変わります。

聞き取りで「that が聞こえる日と聞こえない日がある」と感じていたなら、正体はこれです。あなたの調子ではなく、that の役割が違っていたんですよね。

ここまでのモヤモヤ:「29語も覚えるの?」

正直に答えます。覚えなくて大丈夫です。

表を丸暗記しても、リスニングは変わりません。効くのは、こちらの1文だけです。

機能語は、強く読む理由がないかぎり弱く短くなります。

グループ①〜③に共通しているのは、結局これだけなんですよね。個々のカタカナは「そういえば him は ィム だった」と後から思い出せれば十分。表はブックマークして、聞き取れなかった文に出会ったときに戻ってくる使い方をおすすめします。

話すときのことにも、ひとこと触れておきます。変えるのは1つだけ——内容語との強弱差です。くわしくは後半の実践で紹介します。


応用①:can と can’t の聞き分けは「t」じゃなく「強弱」

I can do it. と I can't do it. を単語ごとに縦に並べて比較した図。can の左にうなだれたキャラクター、can't の左に力こぶを作ったキャラクター。肯定文では can が小さくグレー、否定文では can't が大きく濃紺で、強弱が逆転している。下に「t を探す」は✕、「強弱を聞く」は○
t を聞こうとしても、はっきり聞こえないことがあります。can と can’t は、強弱・母音・文の重心で判断します。

シリーズの定番の謎に行きましょう。can と can’t が聞き分けられない、という悩みです。

まずは聴き比べてみてください。

I can do it.

I can’t do it.

多くの人は、t の音を探して聞き分けようとします。でも、それがつまずきの原因なんです。

can’t の t は、明瞭な「ト」として聞こえないことが多い。

理由は、第5回の止めTの解説にあります。次に子音が続くとき、t は舌先を上の歯ぐきに当てたまま止めるだけになります。破裂させないので、はっきりした「ト」が出ないわけです。can't do なら、t は do の直前で息を止める役だけ。だから待っていても、なかなか来ないんですよね。

では何を聞くのか。can 自体の大きさです。

can の強さ聞こえ方文のどこが強い?
I can do it.弱い(弱形)クン、ほぼ聞き流されるdo が強い
I can’t do it.強い(強形)キャント、母音がはっきり出るcan’t が強い

ポイントは3つです。

  • 強弱 … can は弱く、can’t は強い
  • 母音のはっきりさ … can はシュワに潰れ、can’t は「ア」の音がはっきり出る
  • 文の重心 … can の文は動詞が強い、can’t の文は can’t が強い

2つ目を補足します。can’t は「キャーント」と長く伸びるわけではありません。弱形の can に比べて母音がくっきりしていて、少し長めに感じられる。その差です。

否定は情報として重いので、強く読まれます。逆に肯定の can は、動詞に主役を譲って小さくなる。強弱が入れ替わっているんですよね。

じゃあ、can がはっきり聞こえなかったら、肯定文ってこと?

半分あたりです。ただし、1つの手がかりで決めつけないでください。

言えるのはこうです。とくに強調のない肯定文では、can は弱く流されやすい。だから「can らしき音が弱く通り過ぎた」と感じたら、肯定の可能性が高くなります。逆にはっきり強く聞こえたら、can’t か、強調された can です。

判断するときは、手がかりを重ねます。

  • 母音 … 潰れていたか、くっきりしていたか
  • 長さ … さっと通り過ぎたか、少し留まったか
  • 文の重心 … 強かったのは動詞か、can(can’t)か
  • 文脈 … 前後の話の流れとして、どちらが自然か

1つだけで当てにいくと外れます。4つのうち3つが同じ方向を指していれば、まず大丈夫なんですよね。


応用②:強形が出る3場面——文末の前置詞・強調・単独回答

強形が出る3場面のカード。3枚とも力こぶを作ったキャラクターが上にいて(①右腕、②両腕、③左腕)、①文末の前置詞 at、②強調の CAN、③単独回答の can が、それぞれ大きく描かれている
弱形が基本ですが、強く読まれるときには理由があります。

ここまで「機能語は弱い」と言い続けてきました。でも、例外があります。

機能語が強形で読まれる場面は、大きく3つです。

What are you looking at?

Yes, I can.

場面例なぜ強くなる?
① 前置詞が文末に来たときWhat are you looking at?後ろに逃がす相手がいない
② 対比・強調したいときI CAN do it.その語自体が主張の中心
③ 単独で答えるときYes, I can.1語で文の役目を背負う

1つずつ見ていきます。

①文末の前置詞。What are you looking at? の at は、はっきり「アット」と読まれます。後ろに逃がす相手がいない、というイメージですね。句末では次の語に寄りかかれないため、母音を最後まで保ちやすいんです。同じ理由で Where are you from? の from も強形になります。

注意したいのは、これが前置詞の話だということ。代名詞は文末でも弱いままです。Tell him. の him は文の最後にありますが、弱形のまま「テリム」になりましたよね。「文末=必ず強形」ではないんです。

②対比・強調。I CAN do it.(できるって言ってるでしょ)のように、can 自体を主張したいとき。ここでは can が文の重心になります。強く読む場所を動かすと意味の焦点が変わる——第4回の文強勢の解説で扱った話ですね。

③単独回答。Yes, I can. の can は、do it の部分を省いた残りです。1語で文の内容を背負っているので、弱いままでは成立しません。

3つとも「その語に情報の重みが乗った」場面です。

まとめると、原則はシンプルです。機能語は弱形が基本。強く読まれたら、そこに理由がある。 逆に、強く読まれた機能語を聞いたときは「何か言いたいことがあるな」と受け取れるようになります。


実践:弱形を聞き取るリスニングのコツ——話すときは強弱だけ

左から can と書かれた野球のボールがスピード線とともに飛んでくる。右にはキャッチャーの装備でミットを構えるキャラクターがいて、頭上の思考の吹き出しには「クン kən」。ボールはまだ捕られておらず、来る音を弱形だと予測して待ち構えている場面
聞き取りのカギは耳ではなく、どの音を待ち構えるかです。

では、これをどう使うか。やることは、聞く側と話す側で1つずつです。

ここからも主役は聞き取りです。話す側のコツは、余裕があれば試す追加 Tips として読んでください。

聞く側:待つ音を「強形」から「弱形」に入れ替える

聞き取れない最大の理由は、間違った音を待っていることです。

「キャン」を待っているのに、来るのは「クン」。「ヒム」を待っているのに、来るのは「ィム」。当然、素通りしてしまいますよね。だから直すのは耳ではなく、予測のほうなんです。

具体的には、こう考えます。

  • 機能語のところは、音が小さく短くなると最初から思っておく
  • はっきり聞こえた語(内容語)から、文の骨格を組み立てる
  • 機能語は、聞こえなくても文法から補える

3つ目が大事です。I ___ working when she called. と聞こえたなら、空欄の候補はぐっと絞れます。後ろが working で、時制は過去。was が有力ですよね。弱形は聞き取るというより、埋めるもの。そう割り切ったほうがラクなんです。

ディクテーション(聞いた英語を書き取る練習)で機能語だけ抜けるのも、同じ理由です。抜けたところは、まず文法で埋めてみてください。

話す側:正確な再現は不要、内容語との強弱差だけ

「クン」「ィム」みたいに発音しなきゃダメ…?

いいえ、その必要はありません。ここは、はっきり言い切っておきます。

弱形を完璧に再現できなくても、英語は通じます。むしろ意識するのは、引き算のほうです。

  • ✕ 弱形の音を正確にまねようとする
  • ○ 機能語をはっきり言いすぎない(軽く、短く通り過ぎる)

ここで1つ、誤解しないでほしいことがあります。無理に音を消したり、飲み込んだりする必要はありません。やることは、内容語にしっかり強勢を置いて、機能語は短くつなぐだけ。雑に不明瞭にするのとは、まったく別ものなんですよね。

I want to go. を「アイ・ウォント・トゥー・ゴー」と全部同じ大きさで言うと、平坦に聞こえます。to を軽く流すだけで、リズムがぐっと英語寄りになるんです。狙うのは正確な弱形ではなく、強弱の差。

シャドーイング(音声を追いかけて言う練習)をするなら、内容語をしっかり、機能語を軽く。それだけを意識してください。それ以上は追わなくて大丈夫です。

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まとめ:機能語は弱いのが標準、強形には理由がある

「機能語は弱形で来る」と知っていれば、もう素通りしません。

can が聞き取れない、him が消える、that が聞こえたり聞こえなかったりする。その正体は、全部弱形でした。おさらいします。

  1. ① 代名詞 — him「ィム」/her「ァー」/them「ザム・ェム」。強く読まれない位置では h が落ちる
  2. ② be動詞・助動詞 — can「クン」/was「ワズ(軽く)」/have「ァヴ」。裏方だから弱い
  3. ③ 前置詞・冠詞・接続詞 — at「ァト」/as「ァズ」/that「ザッ」。that は役割で強さが変わる
  4. 応用① can と can’t — 決め手は t ではなく強弱。can は母音が潰れ、can’t ははっきり出る
  5. 応用② 強形が出る3場面 — 文末の前置詞・対比強調・単独回答
記事全体のまとめ早見図。上段は弱形3グループのカード(①代名詞 him ɪm・her ər・his ɪz、②be動詞・助動詞 can kən・was wəz・have həv、③前置詞ほか that ðət・as əz・at ət)、下段は can と can't の比較(can は小さくグレー、can't は大きく濃紺)と、強形が出る3場面(at・CAN・can が大きい)
覚えるのは、「機能語は強く読む理由がないかぎり弱くなる」という1つの原則だけです。

原則は、たった1つでした。

機能語は、強く読む理由がないかぎり弱くなる。

これが頭にあれば、表にない単語に出会っても対応できます。「意味を運んでいない語だから、たぶん弱いな」と当てられるからです。

そして、自分で弱形を完璧に出せるようになる必要はありません。機能語をはっきり言いすぎないだけで、英語のリズムは十分に変わります。今回の収穫は、弱形で来ると知って待ち構えられるようになったこと。それだけで、聞こえ方は変わります。完璧より、通じる。今回も変わらないスローガンです。

続編が公開されました:第11回:英語の ed・s の発音ルール3つ|過去形・複数形を短い英文で聞き取る練習(機能語が「弱くなる」今回に対して、語尾の s・ed の聞き取りを扱っています)

またお会いしましょう、とバイバイするキャラクター

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TOEIC 960の日本人。カナダでのワーホリなど英語を「使う」環境も経験しつつ、いまだに聞き取れない瞬間がある学習者目線の書き手です。「知ってると全然違う」発音・リスニングのしくみを、ゆるく発信しています。

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